と同時に、空気に混じるひとつひとつの匂いが、いつも感じる数倍に濃縮されて鼻に突き刺さるように感じた。
排気ガスの匂い、埃の匂い、通りすがる人や電車の中の人のお化粧や煙草や汗やからだの匂い、息の匂い。
わたしの吸える空気の隙間がないみたいに。
苦しかった。とても。
今朝、電車の中で気付いた。
わたしにとって 香水は防護服と酸素マスクみたいなものなんだ、と。
自分の空気を確保するための。

始まった瞬間、4年前に青森県立美術館にみにいった、シャガールのバレエ衣装にそっくりの ピエロの衣装の人たちが踊り 跳ねていて、スイッチを押されてしまって しょっぱなから涙がでた。
踊る人っていうのは、ただ美しく舞ってるだけじゃない、と今日しみじみ感じた。
オペラグラスで指先や腕の筋肉や表情をみてると、じんと痺れを感じた。
身体まるごと 「感情」だった。
喜び、悦び、裏切り、哀しみ、絶望、期待、悲壮、なにもかもが指の先やぴくりとうごく皮膚で言葉なんて足元にも及ばない深みを含んで 空気を伝ってきた。
アンコールで拍手しながら、ホール全体がほわんとあたたかい球体になってるみたいだとおもった。
言いようのない 歓びの空気を舞台は生み出すことができる。
リアルじゃなきゃできない感動。
あぁ、もう、ますます、とおもった。
