外はまだ夜。
2009年最後の朝。
と、突然の クリスマスプレゼント。
ハイ、って ベッドの上に金色リボンがかけられた濃いピンクの小さな箱。
びっくりして びっくりして かさかさ開けると、キラキラ輝く 壁面に細かい彫りがはいった ほそくてとても上品な指輪。
「ぬけがけして買っちゃった。最近よく頑張ってるさなえにプレゼント」
みるみる目の前が涙で霞んで、しまいには声をだしてうわんと泣いた。
はめてみると カーブがしっくり 指に馴染んで、あっという間に わたしのからだの一部になった。
一気に 優しい優しいきもちが流れ込んできて、少し前までうんざりしてた夜の仕事もなにもかもへの苦い気持ちがきえ去って、ぜんぶがふわふわの 楽しくて気楽な気持ちに切り替わっていた。
指輪をはめて、時々眺めながら、いっしょに冗談いいながら、あったかい部屋で仕事をしてたら、すんなりたくさん頭から手に降りてきて 描きたい絵がかけた。
あまりにショックで
1日中 ぼんやりしそうになって夜を迎えた。
料理をしてても あたまをぐるぐる回るのは このことばかり。
一人で抱えきれなくて、
重さにやられそうで、
もてあまして、ゆうくんの帰りを待ちわびてた。
帰ってきて 晩ごはんを食べるゆうくんに、えぃっと告白した。
「そんなことにほんまになったら辞めようかなぁとまでおもう」と。
そうしたら さほど、というか 全然動じず驚かず、
「辞めたらいいやん」となんのためらいもなくさらりとした返事がかえってきた。
ほぇ?と拍子抜けの私。
でも 一気に いろんな気持ちが音立ててふやけてほぐれていくのもわかった。
私が自分で、いろんな会社的な理由や、会社で通用する理性みたいなやつで、やわらかでほんわりぬくいほんとの気持ちを、無理やり隠して がちがちな固い、逃げ場ないかたまりにしてただけなんだと、ばりっとその壁が剥がれる音聞きながらおもった。
「もしそうなったらスカイプしよ」とか、「1、2年行ってみてあかんかったらその時辞めたっていいやん」とか、明るくいろいろ笑顔で言ってくれるの聞いてたら、なんだかぜんぶなるようになるし、どうなってもどうにかなるような気持ちになってきた。
話す前まで、この世が終わるような気持ちだったのに。
こんなにも寄り添って、おなじ前をみてくれる人がいる。
人生は流されるもんじゃなく、どの方向にでも、流れを変えることができる。
選んで中身を作っていくのは、意志のちからだ。
蓋をあければあたしはまだまだ異動対象には入ってないことも半分以上の確率である。
明日とあさってで その蓋は開けられる。
そのときまで ねむらせとこう。
なんでも 気楽にどんとかまえとこう。
今日はその仲間入り。
帰ったあとに 数時間ゆとりある時間が待ってる、それだけで 今日が倍くらいな厚みとふくらみを増す気がする。
晩ごはん、なにつくろかな。
でもいざとなるとすっかり忘れてて、帰りの上海空港の免税店で はたと思い出したけど、いかにもおみやげ、の雰囲気のもの以外はなくて断念した。
月餅はお月見のときの食べ物だから、季節ものだっていうのも初めて知った。
今日 夜9時をすぎた頃、
MDからのおみやげだと回ってきた箱をのぞくと
そこには
まんまるで、表面に綺麗な模様が彫られた 月餅!
わぁっと嬉しくなって
いただく機会を待って、
帰りぎわに 4つのうち ひまわりみたいな模様のものをひとつ選んだ。
ぱくっと食べると 予想外な食感。
隣で「時々 ローカルな月餅だと粘土みたいな感触と味のがあるよね」とよく月餅は食べるというふかさわさんがぽつり。
と同時に、あぁ、ほんとだ、これは粘土みたいな食感だぁ…と 思いながら、ねちっとしたのをもう一口食べた。
ら。
突然、さっきまで全然正体現してなかった異様な味が一気に鼻に抜けてきた。
げっぺいは口のなかで行き場をなくして、喉もごくりを忘れて、どうしようもなくなってると また隣でふかさわさんが泣きそうになってるわたしを見て。
「あ、だめなやつだった?ほんとに クレヨンの味するやつとかあるからね」
と。
いいえて妙。
まさにクレヨン。
すごく申し訳ない気持ちではあったけど、背に腹は変えられず、そっとティッシュに包んでさよならした。
わたしのげっぺい初体験。