くうきのいろ: 2010-09-03

2010-09-03

「最終出勤日」というひびき




「私事で大変恐縮ですが、本日9/2(木)を最終出勤日とし、退社することになりました。」

退社される人がその日のいちばん最後に送る、退社の挨拶のメール。

入社して初めて見たときは、なんだか大人の世界を覗いた気がした。
とても文章も内容も大人っぽく感じて。
退勤時間6時を過ぎて、いつの間にか送られている、そのタイミングまでも不思議な気がしてた。


それを自分が送ることになるとは。

みなさん いつ準備して こんなメールを作ってるんだろう、と思ってたけど、
当日になれば、自分も誰に教わるでもなく、
デスクやロッカーの片付けをし、宅配で送り、メールを準備し、会社の備品を整理し、
6時の夕礼を迎えていた。
メンズ・ウィメンズのデザインチームとパターンチーム、フロア全員の方々が集まってくださり、その輪の真ん中にいた。
いろんな想いが交錯しまくって、ひとりひとりの顔を見ると その想いがはちきれてしまって、最後 きちんとご挨拶ができなかった。

夕礼は恥ずかしいからいやだな、なくていい、ひっそり去っていこう、と
退社日が決まった日から思っていたけど、
リーダーやチームの方たちが、恐縮するくらいばっちりと色々準備してくださっていて、
みなさんから見送っていただけることが どんなに今回ありがたいかを思い知った。
ひっそりだったら、わたしはもうこの先 どう進んでいいか 自信もなにもなくしてしまってたな、とおもったから。

夕礼が終わり、たくさんの贈り物をいただいて、
はたと PCや携帯を返さないといけないことを思い出した。

そうだ、メール。
作ったメールを読み返して、こころを落ち着けて送信ボタンを押しました。

あとはものすっごくどたばただった。
あれだけ大事に大事にとっておいた いろんなファイルやフォルダも ざざーっと全部選択してごみ箱フォルダに入れて、「ごみ箱をきれいにする」を選んで消した。
さすがに ひやりと心が冷えるのを感じたけれど、それを思ってる時間も余裕もなかった。
かえってそれでよかったのかもな。

PCも携帯もかえし、印鑑を押した。

最後、返すもの。社員証。
総務の方はほとんど帰っていたけれど、ひとりだけ残ってる人をみつけると、
その方は私が入社したその日にオフィスを全部案内してくださった方だった。

呼び止めて、「今日、退社することになったんです」と言ったときの彼の顔はすごかった。
あんまりにも悲しそうな顔をして下さるから もう顔が見えなかった。
社員証をホルダーから出して 手渡す手が震えてしまった。
ありがとうございました、とだけ言って 部屋を出た。


たくさんの方々に たくさんの言葉をいただいた。
そんなに話したことがない方からも。
顔を見れば挨拶をして 一言二言話して笑いあう程度だったキッズのパタンナーさんが わざわざ最後来て下さって、
「横畑さんの服装が好きで、毎日楽しみにしてたんです。毎日お会いできなくなるのが本当に寂しいです」と泣きながら言って下さったのが、とても心にのこった。


ディレクターが言ってくださった「無知の知」ということば。
己を知り、世の中を知ること。
決断したその日から振り返らないで、と。


わたしは 自分で決断したんだ。
会社都合と考えたくもなったりするけど
これはわたしが決断したこと。

この先へ進むべくときがきていた、その波にのったのだ、と。


社会人としての出発地点。
働く上で大切なことを たくさんの方々に教えていただいた。
あの会社ででしかできないような 大きな舞台で働かせてもらった。

ここで終わりじゃない。
あれが出発地点なのだとすると、わたしの先はもっともっと世界へ広がってる。

がんばろう。

ありがとうございました。