それは世の中的にはたいして珍しいことじゃないはず。
友達にもたくさんいるし、ゆうくんだって先週おわりごろは毎日12時すぎてたし。
でも、そうはいっても
実際それが現実になると、なんとなくまいった。
思っちゃいけない禁断の言葉も思った。
数時間したらまたここにいる、と。
でも、でも、砂時計の残りの時間を息をつめて悲しむより、帰ってたった一時間でもいい、あたたかな時間をしっかり味わうほうがいい。
生きてる意味はきちんと感じてないと かなしすぎる。
5時にゆうくんの目覚まし。
池袋までお見送りいくから、と昨日聞いたとき、いろんな不安が溶けていくみたいで思わずじんわり涙が出た。
予定通りに出発。
ゆうくんが重たいトランクをすいすいと運んでくれた。
まだまっくらな街。
ホームで手を振って、閉まる扉からずっとみてた。
だいじょぶだいじょぶ、と言い聞かせて。
お見送りってすごい。
全部の力をもらった。
上海。
初めての国。
薄く黄色く灰色の空。
大陸っぽいなぁと 着陸した飛行機の窓から思った。
街は埃と喧騒。
トイレや人にいちいちびっくりする。
あぁ、ここは、たったいまバブルで高度成長期なんだ、と 夜の景色をみて実感。
夜、ゆうくんと電話して、いつもの夜の空気をちゃんと吸い込めた。
疲れた疲れた。
けど、やっぱり集中してちょっとムリしてでも一気に終わらせるって大事。
めまいがくらくら、立ち眩みもひどくなって、おなかが空っぽになってふらふらになったのを乗り越えたら、なぜか すぅっと無の境地みたいになんにも感じなくなった。
脂肪燃焼だ燃焼だとひたすらもくもくと作業。
ひとまずきりをつけて終えた時には2時半すぎ。
お弁当プラスなにかを今日はご褒美にしよう、と二回目になる コンビニのおでんをつられて買ってみた。
普段は食べないはんぺんにした。
思った以上にぱんぱんにおなかいっぱいになって、おかしいなぁ、と考えると
どうやら犯人ははんぺんだ。
あんなにふあっふあだから弱いヤツとおもってたのに、意外と攻撃的だった。
二度寝を何度かしてると、9時がきて、ふと足元を見るとぼぅっとたつ二人。
何事かとおもったら、「ドラゴンボール、みてもいいかい?」と。
二人だけの日曜朝の習慣がかわいらしくて、ほほえましくて。
いっしょに寝起きの頭4人並んで ドラゴンボールをみた。
実は初めて。
おもしろかった。
観終わるとえりさんがホットケーキをかりっかりふわふわに焼いて、コーヒーとグレープフルーツといっしょに、朝ごはんを用意してくれた。
ぜんぶが手慣れた様子で、いろいろ見習いたくなった。
10時ごろ おいとま。
すっぴんの顔だったけど、どうしてだか全然気にならなくて、そのまま新宿に寄ることにした。
普段は絶対こない、朝の新宿。
開店前のお店を待つ間行った伊勢丹で、ゆうくんは理想的なコートに出会えた。いいものは着たその瞬間にわかるもんなんだなぁとあらためてわかった。
ひととおり伊勢丹を見て、ジャーナルにまた行き、そこでわたしまで理想的なコートに出会ってしまって買ってしまった。
欲しかったダウンとモッズコートがあわさったコート。
うれしいな。
ふたりとも大きな買い物をして一大イベントに大満足なのに、それでもまだ日は真上にあって、駅の時計は1時を指してた。
せっかくだからとオリオールでランチをすることにした。
新宿御苑の散歩道を歩きながらむかった。
ころころ たくさん、みればみるほど転がってるどんぐりを、ゆうくんがまんまるふくふくなくぬぎ、細長いこ、ちびっこを2つ拾って ポッケにいれた。
久しぶりに 小さい頃よくくぬぎで作った ネックレスややじろべえを思い出して そんな話をした。
オリオールで、ゆうくんは鱈と白菜のクリームパスタ、わたしはマルゲリータを頼んだ。
パスタは 一口たべたら はっとするくらいおいしかった。
日曜日なのに、週末を満喫しつくして、何度も何度も「あれ?ほんとはわたしが勘違いしてて、今は月曜日なんじゃないかな」と振り返ってしまうくらい、ぎゅうぎゅう 詰まって充実しきった週末だった。
うちに帰ってもまだ3時で、ゆっくり夕方カレーを作れたし。
一秒一挙手一投足、会話のひとつひとつまで、すべてが密度の高いつやつやの珠みたいで、深く心に焼き付いて、無駄に流れた瞬間なんてひとつもない、完璧な週末だった。
ゴミだしにゆうくんがいってくれたから、一気に朝がやってきた。
コーヒーを煎れて みぃの最後のケーキを食べながら、ずっと観たかったDVDをみる。めいっぱいお洗濯をし、シャワーを浴びる。
コルテオのDVDは観ないことにする。
したかったことを一気にとんとんとんとできて、もうこのあたりまででもかなり充実。
コルテオまで時間があるから、それまでひさしぶりに表参道を歩くことにして、漫才を聞きながらゆっくり出かける支度。
外は上着が暑いほどの陽気。駅まで時間を気にせず歩きながら、表参道についたらどこかでお昼を食べようかという話にする。
池袋で山手線に乗り換えて、久しぶりの原宿駅へ。
尖った細い矢が犇めいてるみたいな独特の雰囲気に、一瞬けおされそうになるも、一人じゃないからと まわりをあんまり見ないように 1番嫌いなGAP前を通りすぎた。
めざすはunmarbleというオムライスがおいしいカフェ。
表参道ヒルズを越えた辺りからすごくおなかがすいてきて、お店についたときにはぺこぺこだった。
わたしは 小エビとアスパラのトマトクリームオムライス、ゆうくんはサーモンの漬け丼。
どちらもすごくおいしかった。いつ来ても失敗がない。
コルテオ開場まで一時間。
表参道ヒルズの中に新しくできた子ども服売り場を見に行って、かわいい五味太郎の本をみつけた。
ジャーナルスタンダードで久しぶりにこてこてのナチュラルテイストをみて、私はなんか大事な自分の好きなものを忘れかけてる気がする、と思ったり。
そんな話をしながら代々木公園のビッグトップへ。
すごいタイミングで会社の後輩にでくわして、本気でびっくりして、おかげで場が和んだり。
開場までの30分、会場隣の代々木公園の広場をうろうろ。
フリマではなく、よくある不思議なエスニックな集まりだった。
舞台から聞こえる 日本語のビートルズを聴きながらソフトクリームを食べた。
ゆるいゆるいおやすみの空気。
みんながアイスやビールを持ってた。
コルテオ会場の入り口からはもう音楽が流れてきてて、半年間待ち続けた想いがひゅんっと一瞬にして沸き上がって、スキップしたいような、身震いするような気持ちになった。
席を探すと5列目の本当のどまんなか。まさかの幸運に 3回目だからのご褒美かも、とすごく嬉しくなる。
全部流れもだいたいの演技も知ってるはずなのに、やっぱり一回一回すべてが本番で 日々の積み重ねの、生きてる人の作り上げる舞台だから、ひとつひとつの動作や表情が 弾けるようにみずみずしくて、その場にしかないもので、一人一人に感情移入してしまって、たくさんぽろぽろ涙がでた。
全体的に ゆるい雰囲気が漂ってるように感じたのは、わたしが 緊張してなかったからなのかもな。
ひとしきりおみやげも見て、ステッカーとストラップを買って出た。
9時の水野夫妻との待ち合わせまで、代々木公園を抜けて 公園通りを下りながら ゆうくんの冬のコートを探した。
店員さんが感じよくて、いろいろ見せてもらってたのしくなった。
8:50。恵比寿で待ち合わせ。
ふたりはさすが恵比寿住まい、お風呂あがりでほかほかのまま、お揃いみたいな色とりどりのニットを着て待っててくれた。
いっしょに住んでるとここまで似てくるんだなぁ、と改めておもった。
最近すきな中華やさんでたくさん飲んで、珍しく真面目な話もしたりしてたら、突然「ふたり、今日 泊まっていきなよー」とえりさん。
私たちもびっくりしたけど、みぃくんが一番びっくりしてた。
ありがたく泊まらせてもらうことにして、みんなでTSUTAYAでホラー映画を借りて、ワインのみながら、肩透かしくらいながら、ちょうどよく心地よく過ごした。
まったく黒の洋服なんて持ってなかったわたしには黒のコーディネートは至難の業。
少しずつ少しずつ、レギンスあたりから黒デビューして、やっと一応アウター、トップス、ボトムス、靴まで一つずつくらいは黒が増えてきた。
今日はタイツ以外、全部黒にしてみたけど、なかなかちょっとむずかしい。
赤い黒、青い黒、緑みの黒、黄味の黒、それぞれあるから間違うとほんとにただ黒を重ねた、ちぐはぐな黒のあわせになる。
まだまだやっぱり全身黒は自分のなかでは落ち着かない。でも だからこそ簡単に「衣装を着てる」わくわく感も味わえて、なかなかなんだか楽しくなってきた。
休日出勤の唯一いいのは、行き帰りの電車がすいてること。
いつもの先頭車両から、いつもは見えない景色がみえて運転手気分が味わえる。
知らなかった。
地下鉄の駅と駅の間の線路は谷になってて、駅がくるたびに ひゅうんとジェットコースターが降下する山に登るみたいに登る。
体感できないくらいなのに、視覚的にはしっかりと急な坂。不思議。
所々しかライトがない真っ暗の線路を数分走ると、突然 さぁっと山の上に駅が現れる。
なんだか 遊園地の、座席が映像に合わせて動く、あの乗り物に乗ってる気分になってくる。
電車の運転手もした従兄弟のせいじくんは、こんな景色が日常だったのかな。
飛行機のパイロットなんて、一部の人しか見られない景色が毎日の景色なんだろうし、人生 それだけで その分 他の人より幅が広い気がする。
と 思ったけど
なにも 電車の運転手やパイロットだけじゃなくても、すべての人 一人一人に、その人だけしか持ってない「日常の景色」があるんだ、ときづいた。
すべての人に。
その景色は自分にもあるけど 自分には特別じゃないから つい人のがすごく特別に思えて羨ましかったりするんだ。
こどもみたいな気持ちで電車に乗ってたのに、意外なとこにいきついた。
早くかえるっていい。