くうきのいろ: 2009-07-23

2009-07-23

北海道 池田町のたび_2日目_DCT garden IKEDA

起きたのは6:14。
目覚ましのなる1分前。普段ならまだもぞもぞ二度寝をするところなのに。

まだ いもむしみたにまるまって寝てるみぃ。
ビデオと写真に撮ってみる。きっと帰ったらびっくりする。ひひっ
しばらく窓の外の、朝もやのかかる景色を眺めてから
30分すぎに起こしてみると 寝てなかったかのように飛び起きた。
そのまま朝風呂へ。

朝の温泉は昨日の晩とはまた違う顔。
モール温泉、という世界にドイツと十勝川温泉にしかない湯質はとろりとしていて「美人の湯」として有名なのだそう。「化粧水のような」という説明をいろんなところでみた。
亞炭層を通ってお湯が出てくるから、植物性なんだって。
モール、っていうのはドイツ語で「植物性」。
褐色で透き通ったお湯が満ちる露天風呂に入る。
すぐそこに十勝川が流れていて、目の前には樹齢450年の樹があって、ゆったりしたきもちになって、すこしぬるめのお湯にふたりで浸かった。
みぃは昨日の晩にふしぎな垢擦りのクリームのおかげで、顔がつるっつるになった、ってうれしそうに顔を何度も撫でてた。

朝ごはんはバイキング。
どんなのかなー?とすっぴんのまま わくわくレストランに入る。
並ぶお皿をみてまわって、ふたりともかおがぴかぴか嬉しくなる。
ほとんど全部、十勝の食材を使ったおかず。
鮭の塩辛、十勝の大豆の納豆、そば粥、ふきの煮付け、甘い豆、
パンのために作られた「まぼろしの小麦」でできた小豆ロール、くるみパン、牛乳。
どれもとてもおいしかった。
知ってるバイキングより ずっとたのしくて、からだにやさしかった。
いももちのおぜんざいも初めての食感だった。
ゆっくりゆっくり味わいながら、何度か席をたっておかわりしながら、きづくと50分近くあさごはんを食べてた。

やっぱり、出どころのわかってる食材っていうのは、
からだにやさしいんだなあ、と改めて思い知った。
食べてるときの気持ちがまず違う。
味わって食べたくなる。食べ物がいとおしいものに感じる。
反省して、これからお買い物をするときは、いくら安いものがあっても、きちんと選んで からだの喜ぶものを食べよう、ときめた。
きっと継続。最初はついつい今まで通りに買いたくなるかもしれないけど、ちゃんとこのあさごはんを覚えておこう。


部屋へかえって、支度をする。
皆既日食のニュースを見ながら てきぱきと準備。
布団をきれいにあげてくれたみぃ。えらいなあ、と なんだかほかっとした。

部屋にさよならを告げ、下のラウンジでコーヒーを一杯。ホットのカフェオレ。
ゆっくり煎れてくれたからか まるい味でおいしかった。

予定通り9時にチェックアウト。全部みぃにまかせちゃった。
その間、おみやげものやさんでおみやげを買う。
昨日の夜に目をつけてた「胡麻んぞく」という胡麻クッキーの試食をふたりぶん、こっそりカバンにいれた。まるで盗んでるみたい!とおもったけど、「ご試食どうぞ」って書いてあるもん、と涼しい顔をしてみる。
ふたりで 昨日の晩に食べておいしかった鮭の塩辛を買った。
みぃは 昨日から触っては吟味してたきつねのキーホルダーを、もう一回全部触りなおして一番ふかふかの子をお買い上げ。
顔がかわいいのとしっぽがふかふかなのを ふたりで選んだ。

部屋にハムとチーズを冷蔵庫に忘れるアクシデント発生だったけど、
落ち着いて DCT garden IKEDA目指して出発。
ここだけ 運転させてもらえた。
どうしても ひろいひろい北海道を一度走ってみたかったから、夢が叶ってうれし。

10時すぎるかな、と思ってたけど、全然車がいないから すいすい進めて
到着したのは9:50。ばっちり。


11時に出なきゃいけないことを確認。
よし、1時間、みっちりみよう。
10時になり、ついた時にエプロンをしめて 準備していた館の方がドアを開けてくれた。
1番乗りのお客さん。

入るとすぐに 今回のアルバムのジャケットで着ていた黒いスーツ。
左手には 手型。
その横には、いままでの衣装がずらり。
小学校5年生の大晦日、おばあちゃんちでみんなで紅白を見ながら、
テレビの前で うわぁぁぁっと見入ってた go for it!のパッチワークの衣装がすぐそこにあった。なんだか信じられなくて、じっと じぃっと見入ってた。
あの時のおばあちゃんちの居間の空気がよみがえる。

高校2年生の夏、ひとりで行ったWDL'99の衣装が一着ずつ真空パックされてあった。
ライブの後、脳裏に焼き付いたのをどうにかして残しておきたくて、
日記帳に 下手な絵で衣装を全部描いた、その衣装たち。
すべてKEITA MARUYAMAデザイン。
色とりどりの花モチーフがつなぎあわされたドレス、
箔がはられた白いシンプルな形のワンピース、
それにはおってた青いガウン、最後に着ていた 左にドレープのある麻のワンピース。
それまで忘れてたけど、衣装を見た瞬間にあの日みた全部の光景と音と気持ちを思い出した。
すごくすごくキラキラしてみえて、どうなってるんだろう、と何度も考えてたんだった。

デビューの頃から今までの衣装が マネキンや真空パックで展示されていて
その変遷をみていて、だんだん 大人のかっこいいとかわいいが混じりあう衣装にほれぼれとした。
わたしは基本的に「かっこいい」が苦手。着るのも作るのも。
だけど、やっぱりただ「かわいい」だけだと偏りすぎて 表現しきれないことの方が多いのかも、と気づいた。
かっこいい形を かわいい素材やモチーフで味付けすることができる。
あんなにラインストーンやビジューをすてきだと思ったことは 未だかつてない。
2007年の紅白の衣装がそれをすごく表してた。
白いフロックコートに、中には白いコットンボイルのふんわりしたキャミソール。
足下はスキニーデニムと白いニーハイブーツ。
フロックコートはウエスト下で切り替わって、ゴブラン織のような生地で控えめなギャザーが寄せてあって、横からみると ふわっとしたAライン。
襟ぐりと袖口にはびっしりと重たそうなビジューが縫い付けられていた。
上半身はかっちり大人だけど、それにレースのモチーフが切り取られて立体的に縫い付けられていて、全体がもつ雰囲気はやさしく おとなのかわいらしさとかっこよさだった。

もうひとつ。
2006年の紅白の衣装。
迫力のある花の刺繍がちりばめられた、濃い蒼の打ち掛けの下にあった、白いシルクシフォンのドレス。柳龍がひらりひらりと胸から足下にかけて螺旋を描く。そのところどころにふわっふわの鳥の羽根。
ああ、これだ、とおもった。
歩くたびに きっと風をはらんで ふわりふわりと動くだろう。
軽く、でも何重もの風を。

ああ、わたしは洋服がつくれるんだった、とおもった。

ここで くまなくじぃっと見て、ああ すてきだなあ、と思ってるだけじゃなく
わたしも作れる技術は身につけてるんだった。
あとは やるか、やらないか、だ。
ただ それだけ。

お願いをしてでも踏み出さなければ
一生 後悔する。

中学3年生の、あの映画のあとみたいに、
見終わったあと、ただただ 茫然として、ちからが入らなかった。

きっと、いま、これは与えられたチャンスだ。

うごくか、うごかないか。


とかち帯広空港に向かう車の中で、
永遠につづきそうな ひろいひろい空と 緑と褐色の大地をみながら
いらない心配や雑念が洗い流されて さらりと自分の素直なところだけがでていた。
剥かれたたまごみたいに。



あまりにしあわせな二日間。
でも、このときもらった光のしっぽのおかげで
この二日間が終わる その寂しさよりも
次への光が見えた そのことに 
大きな大きなちからをもらった。



空港のレストランで豚丼とチーズケーキ半分こして
TOKACHIの字を後にしたとき、
また涙が溢れてとまらなかった。



おおきなおおきなちからを持つ地へ
この時に連れてきてくれたみぃに、
本当に本当に こころからありがとう、を想った。