くうきのいろ: 一輪のカーネーション

2010-05-09

一輪のカーネーション

図書館の帰り道、大学生くらいの女の子が 透明セロファンでラッピングされた真っ赤なカーネーションを持ってるのとすれ違った。

「あ…!おかあさんにあげるのかなあ」って思ったすぐあとに、
「え、でも 一輪だけ…?あげるんだったらもう少しあげればいいのに」と思ってしまった。

でも、朝 遊びに出かけて行ってしまった娘が、夕方ただいまー と帰ってきて、
はい、と一輪 真っ赤な 大きなカーネーションを渡してくれる その場を想像したら、
もう 言い表しようないほど、景色がぱあっと明るくなった。

と、そうしたら もうずうっと忘れてたことが むくむく思い出されてきた。

なんか見覚えがあるとおもったんだ、あのセロファンに一輪包まれた その光景。

小さい頃、妹と私はおこづかい制じゃなくて、必要なときに必要なものをお母さんに買ってもらう、もしくはお金を必要な分だけもらう、というのだったから、自分のお金っていうのは お祭りの時もらったお金のお釣りや 図書券のお釣りをちょこちょこ貯金箱に貯めたものだけだった。
だから、例えばお母さんのお誕生日や母の日に、お花が大好きなお母さんにお花をプレゼントしたいと思ったら、毎回妹とその日が近づくとそれぞれの貯金箱を持ち寄って、ひそひそ「どうする?」って言いながら プレゼントの相談をしてたんだった。

赤いポストの形の貯金箱の、底の黒いゴムをはずして、じゃらじゃらじゃらーと小銭を全部出して、
みぃと一緒に百円の塔、十円の塔、って作っていって、お金を数えた。

毎年、お母さんのお誕生日には 大好きなフリージアを。
母の日にはカーネーションを。

二人合わせてもせいぜい数百円だから、買えても2、3本とかだった。
それを、お母さんと一緒に買い物にいったときに いかにバレずに買って、いかにバレずに家で隠して、夜ごはんのときにサプライズであげるか、それが本当に毎回スリル満点で ものすっごくドキドキ楽しくて仕方なかったんだった。


こんな大事なこと、よく今まで忘れてたなぁ。
あの一輪のカーネーションで全部おもいだした。
貯金箱の手触り、お金を数えるときのわくわく感、こっそり持って帰るときのセロファンの音がすごく気になったこと、時に押し入れ、時に私かみぃの部屋に隠しておいといたこと、じゃーん!ってあげるときのものすごく嬉しかったこと。
リビングの黄色明るい光と 楽しい食卓。


家族、って、あれだ、とはっきりおもう。
その家だけの恒例の行事、その家だけの楽しみ。
その想い出で 今ができてるんだな、と。

 

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